ロマン・キムは議論を呼ぶヴァイオリニストである。ケルンを拠点にし、顔の半分をプリズムのように輝く分厚いグラスで覆いながらも、ヴァイオリンの伝説的奏者たちから非常に高く評価されている。例えばイヴリ・ギトリスはキムの芸術について「自分が生まれてからこのかた聴いた一番ものすごい演奏だ」と絶賛した。まだ活動を初めてそれほど長くは経っていないが、内側から沸き上がる自身の感情を表現すべく、ヴァイオリンの技術的な限界を押し広げることに成功している。ニコロ・パガニーニのように、バッハの「G線上のアリア」の全パートをヴァイオリン一挺で演奏してみせた。このYouTube音源は世界中で聴かれることとなり、ロマン・キムの名前を有名にした。
ソリストとして、爆発的なエネルギー、信じられないテクニック、音の美しさなどを批評形に称賛されている。
湧き出る創造力を駆使し、新たなテクニックの開発に余念がない。新しい弦も製作し、上記のプリズムのようなメガネは2014年に製作した。2016年、このデバイスは韓国とドイツの科学者によって研究され、結果として、脳の活動を活発化させ、感情を研ぎ澄まし、セルフコントロールがよりできるようになることが証明された。
作曲家としてのキムは、学術的なことや伝統にはまったくとらわれない。自身のロマンチックな情念および技術的なチャレンジに立ち向かうべく作曲し、編曲をする。時としてヴァイオリンでは不可能だと思われていたことも実現している。主な作品としては椿姫の「乾杯の歌」、モーツァルト「怒りの日」のソロヴァイオリン編曲、自身が作曲したヴァイオリン協奏曲(2017年、ルーマニアのクルジュ=ナポカで初演)などがある。またヴァイオリン独奏のためのモーツァルトの「アイネ・クライネ・ナハトムジーク」、ディープ・パープルの「ハイウェイ・スター」はセンセーションを巻き起こし、ファンや目利きたちの間で大きな話題となった。また彼が編曲したバッハの「G線上のアリア」はベーレンライターより2015年に出版され、数ヶ月にわたって品薄の状態が続いた。ヴァイオリンとピアノのための「3つのロマンス」もまた大きな話題となった。この曲もベーレンライターより出版されている。上記の「アイネ・クライネ・ナハトムジーク」もまたベーレンライターより2019年4月にリリースされている。
韓国、タタール、ベラルーシの血を引く家系出身。カザフスタン生まれ。5歳のときにヴァイオリンを始めた。8歳でモスクワ中央音楽院でガリーナ・トゥルチャニノヴァのクラスに入学した。2004年にムスティスラフ・ロストロポーヴィチ財団より助成を受ける。2008年からはケルンでヴィクトル・トレチャコフに師事。2012年にヴァルセシア・ムジカ国際コンクールに入賞。イタリア、ドイツ、フランス、ハンガリー、ロシア、アメリカ、中国、韓国、ルーマニア、スイス、台湾で演奏してきた。ハンブルク・ライスハレ、デュッセルドルフ・トーンハレ、ケルン・フィルハーモニー、ブカレストのアテネ音楽堂、ベルリン・フィルハーモニー、ミュンヘン・ヘラクレスザール、北京音楽庁、バーリ・ペトルツェッリ劇場、ソウル・アーツセンター、ブダペスト・フランツ・リスト音楽院、台北国家音楽庁などで演奏。北ドイツ放送響(アジス・ショハキモフ指揮)、スウォン・フィル、デュッセルドルフ響(アレクサンダー・ブロッホ指揮)などと共演している。
現在ケルンに拠点を置いており、地元の音楽院で作曲の勉強をしている。自分でデザインしたヴァイオリンを演奏している。この楽器はケルンの有名なヴァイオリン製作者、アレクサンダー・ハジンのワークショップで2015年に作られたもので、「スペリオール」という名前である。