~ソプラノとして一世を風靡したステファニア・ボンファデッリによる演出~
オペラ≪ノルマ≫は、「ベルカント・オペラの最高峰」と評されたりするが、それどころか、すべてのイタリア・オペラのなかで際立った傑作といえるのが《ノルマ》だ。そこには、民族の精神的支柱であった巫女が道ならぬ恋に身を染め、火刑台に消えるまでの変遷に、人間のあらゆる感情が詰め込まれている。そのドラマをベッリーニは、憂いをふくむ旋律に劇的な表現もまじえ、隙のない崇高な音楽で彩った。その結果、ノルマ役はあらゆるオペラのなかでも表現の幅が広く、負担が最も重い役になってしまった。だから、成功するもしないもノルマ役のソプラノ次第と称されている・・・ノルマより年下の巫女であるアダルジーザに、ベッリーニはノルマより軽い声のソプラノを想定していた。(オペラ評論家 香原斗志)
◆◆あらすじ◆◆ 紹介:オペラ評論家 香原斗志
【第1幕】ローマの支配下にあるガリア地方のケルト人は反撃の機会を狙っているが、彼らの精神的支柱であるドルイド教の巫女長ノルマは、ローマの総督ポッリオーネとの間に密かに二人の子供をもうけている。だが、ポッリオーネはノルマへの愛は冷め、若い巫女アダルジーザに夢中なのだと語る。人々が集まると、ノルマが登場して神に祈りを捧げながらも、自らの使命と秘めた愛との間の葛藤を歌う。アダルジーザがノルマのもとを訪れて禁断の恋の悩みを語ると、最初は、ノルマは自分の体験と重ねて同情するが、そこにポッリオーネが現れ、彼が相手だと知ると激怒する。
【第2幕】ノルマは就寝中のわが子を殺そうとするができない。アダルジーザに、自分は死ぬつもりなのでポッリオーネのもとにわが子を連れていき、ポッリオーネと結ばれて子どもを守ってほしいと頼む。感動したアダルジーザは、ノルマのもとに戻るようにポッリオーネを説得すると約束する。ノルマの父であるドルイド教の首長オロヴェーゾは、ローマに反撃したい兵下たちを、時期を待つように説得している。一方、ノルマは恋人が戻るのを心待ちにしていると、アダルジーザの説得が不調に終わったと知らされ、怒り狂って人々を集め、ローマを殲滅せよと命じる。そこに捕えられたポッリオーネが連行される。ノルマは人払いをしてポッリオーネに、アダルジーザをあきらめれば助命すると伝えるが、彼は拒否。怒ったノルマは人々を集めるが、自分の裏切りを告白。わが子を父親に託して、ポッリオーネとともに火刑台に進む。
◆◆上演時間◆◆ 全2幕 約3時間 : 第Ⅰ幕90分/第Ⅱ幕70分 休憩1回
◆◆主なキャスト◆◆
【ノルマ】 フランチェスカ・ドット
【ポリオーネ】 ラモン・ヴァルガス
【アダルジーザ】脇園 彩
【オロヴェーゾ】アンドレア・コンチェッティ
【指揮】ファブリツィオ・マリア・カルミナーティ
【演出】 ステファニア・ボンファデッリ